ニッコロ・マキァヴェッリの生涯 その微笑の謎

読書メモ

書籍データ

書籍名 : ニッコロ・マキァヴェッリの生涯 その微笑の謎
著者 : マウリツィオ・ヴィローリ
訳者 : 武田 好
発行所 : 白水社
ISBN978-4-560-02625-0

概要

ニッコロ・マキァヴェッリの人生は,努力と挫折と絶望と,笑いに彩られている.

ニッコロは政治を通して,イタリアへの祖国愛を表現し,名誉を望んだ人間であった.仲間のまとめ役であり,いつも輪の中心にいて皆を楽しませる愉快な男であった.

仕事として外交交渉をフィレンツェの書記官という立場から行い,チェーザレ・ボルジアをはじめとして様々な人物と出会い,観察をし,その思想を深めていった.

優れた人間の行動は目立ち,名誉を受ける.結果,出自からくる差別,名誉への嫉妬などの悪感情をその身に受け,多数の権力者・有識者の無理解も手伝い,失脚した.

失脚後,田舎で家族とともに苦しい隠遁生活を営む中でも,歴史を学び,思索し,時には喜劇をつくり,恋をした.

喜劇をつくったのは人間を笑い,自らの状況を笑い,負の感情をごまかした.ニッコロは泣かないために笑った.微笑んだ.

ニッコロの人生はあまり報われなかったが,仲間達を笑わせ,微笑みを残して死んだ.

死の間際,とある自分の見た夢について仲間達に語り,そのあと次のように説き,笑いを誘った.

聖者や福者らとともに天国で退屈な死を迎えるくらいなら、
古典古代の偉人達とともに政治を議論するために地獄へ堕ちた方がましだ

メモ

マキャヴェリズムの意味から想像する人物像と,本書を読んで受ける印象は大分違った.

冗談を言わず,黙々と思索し,君主に提案する,そんな印象を勝手に想像していたので,興味深かった.いたずら好きで口がうまく,笑いを好む男.そして猛烈な祖国愛を秘めた男.

この本のテーマは微笑.でも歴史の流れとニッコロの生涯がおおよそわかる内容なので,それを知らない分楽しめた.

マキァヴェッリ

君主論は当時の権力者・有識者に受け入れられていなかった.
他の著作物はどうだったのだろうか.